
──── 現場からのノート 01|沈黙
5秒間の沈黙を、あなたはどう受け止めましたか?
静か なミーティングの中で、グローバルチームの12人に、こんな問いを投げかけました。
返ってきた答えは、一人ひとり違っていました。
「このままでは、期限までに目標を達成できないかもしれない……」
「表には出ていない意見の違いがあるのかもしれない……」
「それぞれが、自分の考えをじっくり整理しているのだと思った……」
「私には、それほど長い沈黙には感じられなかった……」
対話が始まる前、それぞれが、その沈黙を自分なりに意味づけ、それが現実だと受け止めていま した。
ほかの人の話を聞いたことで、一つだった見方が、十二通りの見方へと広がりました。
結局、あの沈黙が何を意味していたのかについて、答えは一つにまとまりませんでした。
それでも、チームには確かな変化が生まれていました。
数秒の沈黙が流れても、誰も身構えなくなっていました。
皮肉なことに、ミーティングで沈黙が続くことは、以前より少なくなっていました。
それぞれが、自分だけの「時間のものさし」で沈黙を測っていたのです。
そのことが見えるようになると、沈黙はもう、それほど特別なものではなくなりました。

助けるのが早すぎると、
かえって相手は待つようになる。
──── 現場からのノート 02|助けること
助けるのが早すぎると、
かえって相手は待つようになる。
ミーティングが静まり返る。
その場に漂う圧力を、リーダーは感じ取る。
誰も何も考えていないようには見えない。
けれど、誰も口を開こうとしていない。
いつの間にか、その沈黙はリーダーの責任になっている。
そこで、誰かを名前で指名する。
順番に話してもらう。
まだ話していない人を冗談めかして促す。
やり方としては、うまくいく。
人は答える。
沈黙は終わる。
ミーティングは、また動き始める。
人は話している。
けれど、自分から話すことを選んだわけではない。
今日のミーティングは、その場を乗り切ることができました。
けれど、同じことは、またすぐに繰り返されます。
— 誰も意図していなかったパターン
ミーティングが静まり返る。
誰かが「ここを動かさなければ」と感じ、場に手を入れる。
その働きかけはうまくいく。
だから次も、同じようにしたくなる。
一方で、ほかの人たちは、沈黙になれば誰かが埋めてくれると学んでいく。
誰も意図しないまま、チームの中にひとつの型ができていく。
助ける人が増えるほど、ほかの人は待つことを覚える。
待つ人が増えるほど、誰かがますます「助けなければ」と感じる。
誰か一人が問題なのではない。
全員が、それぞれ違うかたちで、この型を支えている。
もし「助ける人」と「待つ人」が、チームのいつもの役割ではなくなったら、何が起こるだろう。

— 誰も意図していなかったパターン

──── パターンが見えてくると
パターンが見えるようになると、新たな選択肢が生まれます。
期待される答えを探すのをやめ、自分自身の考えを探し始める。その瞬間が見えることがあります。
──── 現場からのノート 03|やる気
行動そのものは事実かもしれない。
けれど、その意味づけは間違っているかもしれない。
あるリーダーは、自分のチームについて「やる気がない」と話していました。
そう見える理由は、十分にありました。
人は待つ。
慎重に言葉を選ぶ。
誰かに求められないかぎり、めったに自分の意見を口にしない。
けれど、関心を失っていたわけではありません。むしろ、ずっと周囲を見ていました。
場の空気を読む。
相手の反応を確かめる。
どこまでなら安全に言えるかを見極める。
それにも、かなりの力が要ります。
誰からも出されていない「正しい振る舞い」の試験に、通ろうとしていたのです。
考えがようやく心の中の税関を通り抜けた頃には、ミーティングはもう次へ進んでいました。

やる気がないように見えるのは、何を言っても安全だと思える言葉を探し続けた疲れなのかもしれません。

──── BEMiが向き合うところ
いちばん近道に見える方法が、いちばん早くたどり着けるとは 限りません。
ミーティングが静まり返る。すると、答えは簡単なように思えます。
もっと話しやすくすればいい。
だから組織は、人が話しやすくなるように取り組みます。
コミュニケーションのスキルを磨いたり、リーダーが発言を引き出す力を身につけたり。
けれど、そうした取り組みは、本当に育てる必要のあるところから目をそらしてしまうことがあります。
話さないほうが賢明だと思うようになったのは、いつからだったのか。
助けに入るしかないと感じるようになったのは、いつからだったのか。
私たちは、その答えを代わりに示すことはしません。
互いに探究していける場をつくります。
お互いの不安やためらいを聞き合ううちに、沈黙が少しずつ理解できるようになります。
助けようとする行動も、同じです。
両方が見えてくると、部屋に流れる少しの沈黙まで、すぐに何とかしなければならないものとして扱われることはなくなっていきます。

──── 仕事は、こうして進んでいきます
具体的な出来事から始める
一般論は、たいていきれいにまとまっています。
けれど、本当に役に立つものは、実際に起きた出来事の中にあります。
だから私たちは、実際にあった出来事から始めます。
電話が鳴り、画面に相手の名前が表示された。
予想していなかった質問をされた。
相手の表情が、一瞬だけ変わった。
部屋が、思っていたより一秒長く静まり返った。
どうするか決める前に、誰かが助けに入った。
そして、そこからさらに絞っていきます。
居心地の悪さを感じる直前、頭にはどんな考えが浮かんでいたのか。
「こうあるべきだ」「こうであってはいけない」と思っていたことは何だったのか。
そのとき、体は何をしようとしていたのか。
そうして少しずつ範囲を狭めながら、いちばん力を持っていた考えを探していきます。
いちばん強く感情を動かしていたのは、どの考えだったのでしょう。本当の答えは、最初に出てくるものとは限りません。

具体的な出来事から始める


──── BEMiの場で起こること

──── BEMiの場で起こること
指示はありません。
正解もありません。
さて、どうしましょう。
BEMiのプログラムの多くは、参加者全員が初めて見るひとつのビジュアル・プロジェクトから始まります。
説明はありません。
決められた手順もありません。
正解を知っている人もいません。
前に進むには、気づき、話し、考え、問いかけ、耳を傾けるしかありません。
そうしているうちに、チームがいつも無意識に繰り返しているパターンが、少しずつ見えてきます。
確信がなくても話し始める人は誰か。
様子を見る人は誰か。
誰かの後押しを待つ人は誰か。
この混乱を何とかしようと動き出す人は誰か。
このプロジェクトで何を話すかよりも、その話し合いの中で何が見えてくるかのほうが大切です。
仕事の現場でも、予想外の出来事は、説明書を持って現れることはほとんどありません。

──── 現場で起きたこと
あるチームに、いつも前向きなメンバーがいました。
誰もが成長し、それぞれが力を発揮し、チームとして前に進んでほしいと願っていました。
場が静かになると、人を励まし、相手の気持ちを代わりに言葉にしたり、会話がまた動き出すように働きかけたりしていました。
その思いに、偽りはありませんでした。
一方で、ほかのメンバーは慎重でした。
話し始めるまでに時間がかかる人が多く、そのたびに彼女が場を動かす存在になっていきました。
いつものパターンです。
彼女が助けるほど、ほかの人は待つようになる。
ほかの人が待つほど、彼女は「助けなければ」と感じるようになる。
プログラムを通して、グループには二つだけお願いをしました。
話すタイミングは、自分で決めること。
自分のことだけを話すこと。
彼女が誰かを励ましたり、相手の気持ちを代わりに説明したり、場を前に進めようとしたりするたびに、私はそこで止め、その先は本人たちに委ねました。
最初のうちは、とても難しそうでした。
彼女は、ただ助けようとしていただけだったのです。

彼女がいなく ても、
チームが動き始めたとき
彼女が助けるのをやめると、何が起きたのでしょう。


けれど、時間がたつにつれ、彼女は気づき始めました。
自分が助けていたのは、相手のためだけではなかったことに。
場が静かになったとき。
思っていたよりも、グループの進み方がゆっくりだったとき。
その不安に向き合うためでもあったのです。
少しずつ、彼女は自分が場を動かすことをやめました。
すると、ほかのメンバーが動き始めました。
自分から話し始める。
対話は前よりも活発になる。
誰か一人が、その流れをつくる必要もなくなっていきました。
プログラムの後半になると、私が口を挟むことはほとんどありませんでした。
半年後、彼女からメッセージが届きました。
BEMiに参加する前の彼女は、多くの時間とエネルギーを、人を導き、励まし、役割を割り振ることに使っていたそうです。
今では、チームの人たちが自分で考え、自分から動くようになりました。
その分、彼女自身は事業のことを考えたり、全体を見渡したりする余裕を持てるようになったと言います。
彼女は、助ける人ではなくなったわけではありません。
助けなくても、チームが動くようになったのです。

チームは、自分たちで動く力を取り戻しました。
リーダーには、考えるための余白が生まれました。

──── 実際に見えてくること
人の成長は、さまざまなかたちで表れます。
けれど、そのすべてを
測るものとして扱う必要はありません。
人が何をできるかは、ある程度まで見ることができます。
実際にどのように行動したかも、観察できます。
けれど、いくつもの選択肢の中から何を選ぶかという、その内側の瞬間だけは、その人自身のものです。
人にとって、本当に大切な営みの多くは、そこで起きています。
言わずに飲み込もうとした考えを、そのままにしないこと。
湧き上がった不安に気づきながらも、すぐには従わないこと。
助けたくなる衝動を感じながら、その場を相手に委ねること。
もし、その内側の選択まで測ろうとすると、人の意識は「どう選ぶか」ではなく、「どう評価されるか」へと向いてしまいます。
だからといって、内側で起きた変化が見えないわけではありません。
これまで気づかなかったことに気づくようになる。
長く続いてきた習慣が、少しずつほどけていく。
現実の場面で、新しい選択が生まれるようになる。
その人の内側で行われた選択は見えなくても、その跡は、確かに現れてきます。

見立てが変わってきたかもしれません
あなたは、この状況の何が問題なのか、ある程度はっきりした見立てを持って、ここまで来たのかもしれません。
やる気が低い。
コミュニケーションがうまくいっていない。
当事者意識が足りない。
心理的安全性がない。
その見立てにも、今なお当たっている部分はあるでしょう。
けれど、それだけでは足りないように感じ始めているかもしれません。
このページのどこかで、少し立ち止まったかもしれない。
同じ状況が、別の角度から見えてきたかもしれない。
あるいは、考えていた打ち手は、本当にそこから始めるべきなのだろうかと、疑問が生まれたかもしれません。
たとえば、心理的安全性について考えてみます。
人が率直に話すためには、まず安心できる環境が必要だと、よく言われます。
けれど、どこまで安全であれば、話すという選択がその人自身のものになるのでしょう。
そして、不快さを感じないように守ろうとすることは、いつから、参加する責任を別の誰かが引き受けることになるのでしょう。
ここでの目的は、心理的安全性に賛成することでも、反対することでもありません。
ひとつのよい考えが、疑われない答えになった瞬間に消えてしまう問いを、もう一度そこに置いてみることです。
その問いによって状況の見え方が変わったのなら、すでに、そこから一緒に考えられるものがあります。



BEMi CEO
James Chappell
──── 現場で起きたこと、その先に見えてくるもの
このページを読んで、ご自身の組織を見る新しい視点が、たとえいくつかでも生まれたなら、私たちはきっと、よい仕事ができると思います。
まずは、話すことから始めましょう。
いま何が起きているのか。
すでに何に気づいているのか。
そして、これから何をしようと考えているのか。
あなたの話を丁寧に聞き、問いを重ねながら、表面にはまだ現れていないことについて、率直にお伝えします。
別の進め方にはどんな可能性があるのか。
時間をかけて、どのように仕事を進めていけるのか。
どこから始めるのが、いちばん役に立つのか。
一緒に考えていきます。
答えにくい問いも、そのまま持ってきてください。
できるかぎり率直に、そして現実に役立つかたちでお答えします。

BEMiでは、自信を持って発言できるチームを作り上げるためのトレーニングを行います。各企業様にとってベストなプログラムを選択、ご提案させていただきます。まずはお気軽にお問い合わせください。
